地震の際に建物がどのように崩れるかを見てみたい人は動画サイトで「E-ディフェンス」の実験映像を見てみるといいでしょう。
「E-ディフェンス」は阪神大震災を受けて作られた世界最大の振動実験施設です。巨大な人工地震発生装置の上に実際の建物を建ててさまざまな振動を加えてどのように建物が崩れるかを見ることができます。
映像を見ていれば建物は横揺れに対して弱いことがわかると思います。建物は重力に逆らって建ち、重い屋根や二階部分を支えなければいけませんのでもともと上下方向の力に対しては強くできています。
一方、水平方向の力(横揺れ)が建物にかかるのは台風や地震といった非常時のときだけです。そのためかつての建物は水平方向から力がかかることを想定しておらず地震に対して非常にもろいものでした。
水平方向の力に対して建物を強くする計算方法を実用化したのは、日本の建築構造学の父と呼ばれる東京帝国大学の佐野利器という人物です。「建物の自重の0.1倍の水平方向の力がかかっても倒壊しない」という基準を定め、その基準によって建てられた建物は関東大震災においても倒壊しなかったと言われています。
その後、佐野の提唱する構造計算は日本をはじめ世界中に広がり、今日の耐震基準の基礎となっています。
このように建物は地震の縦揺れには強くできていますが、横揺れに対しては十分な耐震設計が必要です。不十分な耐震設計では水平方向の力に耐えられずに柱や壁が壊れてしまい、上の階や屋根などの重力を支えきれなくなって倒壊してしまうのです。